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株式会社JTB

2026年6月29日

現場と経営がお互いにできることを考えて、社員の「キャリア自律」に取り組む

株式会社JTB

事業内容:人と人、地域、組織をつなぐ交流創造事業

業種
生活関連サービス業・娯楽業
地域
東京都
従業員数
1万人~
取り組みの概要
  1. ポイント1

    直面していた課題

    • 経営統合とコロナ危機で社員がキャリアに不安を抱える
    • 上司は部下のキャリア支援をするよう言われても、どうアプローチすれば良いか分からない
    • 研修は豊富だが、社員は受け身になりがち
  2. ポイント2

    取組と成果

    • キャリア自律支援を企業戦略の柱に据え、仕組みを構築
    • 上司には面談サポートキットにより支援、 上司が部下の研修前後でフォローすることで研修効果も向上
    • 参加型イベントで能動的に学ぶ機会を創出し、学び合う風土を醸成、研修受講者も増加
取り組みの成果
現場と経営がお互いにできることを考えて、
社員の「キャリア自律」に取り組む

※本記事の内容、役職、部署名は取材当時のものです

人と人、人と地域、人と組織などをつなぐ交流創造事業を事業領域とし、人々の交流やつながりを生み出してきた株式会社JTB。旅行だけにとどまらず、お客様の満足や法人の課題解決につながる幅広い商品やサービスを提供しています。社員の「キャリア自律」を支援する数々の仕組みと学び合う風土づくり、現場での取組をご紹介します。

事業環境の変化から、キャリアとカルチャーの改革に取り組む

人財開発チーム・シニアコンサルタントの中村さん
人財開発チーム・シニアコンサルタントの中村さん

当社には、社員のキャリアや企業風土に対する考え方に大きく影響を与えた、2つの出来事があります。

1つ目は、2018年の経営統合です。

当時、事業や地域の特性に合わせて分社化していた15社を一つに統合しました。その際、各社にはこれまで形成してきた独自の風土がありましたが、新たな基盤づくりのため一つの企業文化に束ねようと「カルチャー改革」を始めました。

一方、社員にとっては、これまでとは違うフィールドで力を発揮するケースが増えました。例えば、カウンターで個人のお客様を担当していた社員が法人営業や教育旅行に携わるようになるケースや、国内で販売促進に関わっていた社員がグローバル戦略を担当するようになるケースです。

そこで、自身のキャリアについて主体的・能動的に考えて行動する「キャリアオーナーシップ」という考え方を根付かせようと「キャリア改革」を始めました。

2つ目は、2020年からのコロナ禍による危機です。

世界中の観光需要が蒸発し、過去最大の赤字を計上したため、抜本的な構造改革を行いました。経営陣が現場を回って社員の声を聞いたところ、将来に対する不安を抱えている様子を目の当たりにしました。この苦境の中で、改めて未来を見据えた中期経営計画を作成し、経営の根幹に「DEIB」(多様性(D)・公平性(E)・包括性(I)に Belonging=心理的安全性を加えたもの) を据えて、社員が「自分らしく安心して働ける風土」をつくることを改めて宣言しました。

そして、これまで取り組んできた「カルチャー改革」と「キャリア改革」を更に進め、社員が自分のキャリアを考えて自ら成長し、会社はそれを支援することで事業価値を高める企業風土にしていくことを目指しました。

社員の声① 新しいことを経験しに外に出て、チームを前向きに

第六事業部・営業第三課長の佐伯さん
第六事業部・営業第三課長の佐伯さん

コロナ禍では、入社年次の若い社員が4人いる営業のリーダーでした。コロナ前に決まっていた仕事はなくなったものの、売上の目標数値が各グループで設定されていました。

そこで、少しでも新しいビジネスの種を探そうと、地域副業を通じて知見を溜めて、新しい事業へのチャレンジを模索していました。そして、自分たちの持っている「強み」は何かを考えて可能性を広げることにしました。

その活動を通じて、当時の上司が営業組織横断のチームを作ることにより私の挑戦を後押ししてくれる環境を用意してくれて、上司には壁打ちをしてもらう等のサポートをしてもらいました。

正直、コロナの影響で会社を辞めるかどうかの相談を受けることが多かったですが、私の様々な活動を通じて今後の会社への可能性を感じ、知恵を出し合い一緒に行動を起こしてくれる社員もいました。この会社でキャリアを高められることを実感できれば、前向きになれると思いました。

今は22人の部下がいる管理職です。着任前に、どんな言葉をどんな自分で伝えたら良いのか悩みました。悩んだ結果、「何をしたいのか?」を問う人になろうと決めました。本人が描きたいキャリアと業務が少しでも一致するように心掛けています。管理職として経験の引き出しが多ければ多いほど、色々とサポート支援ができるので、私の武器かなと思っています。

最近管理職の仕事として、面白いと感じるのは、部下のモチベーションが上がっているのを実感することです。学んだことを実際に試してみた部下が、お客様から前向きな反応を頂き、それを課内で共有したら他の社員から「私も○○の企業に提案をしてみたい」と言ってくれたりすると嬉しいですね。

「自律創造型人財」の育成に向けた仕組みと風土をつくる

目指すべき人財像を明確に打ち出し、会社と社員それぞれがやるべきことを明確にした
目指すべき人財像を明確に打ち出し、会社と社員それぞれがやるべきことを明確にした

私たちの人財に関する基本理念は、持続的な価値創出の源泉は「人財」であり、社員の成長・活力がグループの成長を支えるというものです。そして、会社は社員の個性や多様性を尊重し、成長・挑戦の機会提供と組織風土づくりに努め、社員は自己成長と挑戦を続け、新たな価値を創造する「自律創造型人財」を目指しています。

自律創造型人財の育成に向けて、能力開発支援・キャリア開発支援・組織風土改革支援の3つに取り組んでいます。能力開発支援は研修の質の向上と体系の整備、キャリア開発支援はキャリア研修やマネジメント層への支援 、組織風土改革支援は学びを促すコミュニティの形成や環境の整備などを行っています。

キャリア自律と社員の成長を支援、上司には面談サポートキット

「未来への行動チェックシート(シートB)」一部抜粋
「未来への行動チェックシート(シートB)」一部抜粋

まずは「未来への行動チェックシート(シートB)」 があります。

人事評価制度で使用する評価シートに、成果目標等を設定する「シートA」とは別に、5~10年後になりたい姿や活躍したい職種、それに向けて今年どこまで取り組むかを記入する「シートB」を追加。本人と上司で面談を行って内容を確認し、期末に振り返りと評価を行います。

上司に対しては「プラスキャリア」という面談サポートキットを用意しました。

これは、上司は部下のキャリアを支援するよう言われても、今までキャリアについて考えてこなかったため、どうアプローチすれば良いか分からない場合が多いことから作成したものです。

面談のコツや、部下のキャリア支援をする上で気を付けるべき点などを動画にまとめ、社内webに公開しました。必要なシート類もダウンロードできるようにしています。

なお、社内webには各事業所等の仕事紹介ページを設けており、社員がどのようなキャリアパスが可能かを知る機会を提供しています。こうしたページも、部下へのキャリア支援に役立ててもらっています。

基本的に、研修は手上げ方式で、社員は自分が学びたいテーマを選んで受講します。受講の前後には「研修アクションプランシート」を使って上司がフォローを行います。

本人が受講前に動機と目標、レッスンルーブリック(各研修に設定されている能力取得の到達度・行動基準)を入力し、上司が確認してコメントを入力します。本人は受講後1週間以内に行動計画を立て、3カ月後に計画の達成度とレッスンルーブリックの到達レベルを入力、上司はそれを確認してコメントを入力します。これらは全て社内のLMS(ラーニング・マネジメント・システム)を通じて行います。

「研修アクションプランシート」運用の流れ
「研修アクションプランシート」運用の流れ

当社では「研修を受けて行動する自信がついたか(=自己効力感)」のスコアを用いて研修の効果測定を行っています。

研修前に上司が動機付けを行い、研修への期待値を高めてきた受講者は、自己効力感も高まる傾向があります。また自己効力感が高い受講者は、受講3ヶ月後に上司が確認・同意するレッスンルーブリックの到達レベルが「研修のゴール」を超えて「発展レベル」に到達している傾向がありました。上司が「研修アクションプランシート」を活用して受講前後のフォローを行うことで、社員の成長や行動変容につながっています

学びを促す環境と学び合う組織風土づくり

「学びのサマーフェスティバル」
9日間でリアルタイム視聴者が延べ15,186人、登壇者267人(2025年)の一大イベント
「学びのサマーフェスティバル」
9日間でリアルタイム視聴者が延べ15,186人、登壇者267人(2025年)の一大イベント

社員のキャリア自律や成長意欲の促進と、学び合う組織風土づくりの一貫として「学びのサマーフェスティバル(通称サマフェス)」を開催しています。

最初はコロナ禍で研修ができなかった際のwebを使った講義配信だったのですが、それだと一方的に聞くだけになってしまうので、社内で企画を募集し、社員自らが講師となって発信するプログラムが中心のイベントに変更しました。各部署に15分から1時間で発表してもらい、その様子をwebで配信。日替わりで多くの社員が登壇しており、海外の事業部によるライブ中継や、出向している社員からの仕事紹介、研修で受けた内容の紹介もあります。

4年前は5日間だったのが、今では2週間にも及び、リアルタイム視聴者が延べ1,500人程度から15,000人を超える一大イベントに成長しました。

サマフェスは、自分の学びをシェアすることで、本人の主体性を促し、周囲も他の社員の学びに触れて刺激を受けることに繋がります。さらに多様な働き方を知ることで、キャリアや仕事の幅を広げることにも役立っています。

社員の声② 現場発・5~10年後の自分を考える参加型セミナー

東京中央支店・HR事業戦略特命リーダーの伊藤さん
(営業推進課 戦略推進グループ)
東京中央支店・HR事業戦略特命リーダーの伊藤さん
(営業推進課 戦略推進グループ)

2018年の経営統合を契機としたカルチャー改革の一環として、全国の組織で立ち上がった「Smile活動」 は、現在も各組織で継続されています。各組織のSmile委員長・委員を中心に、社員が主体となってコミュニケーションの活性化や学びの機会づくりなどに取り組んでおり、こうした活動が社員同士の学びを促すコミュニティの形成や、前向きに挑戦できる環境づくりにつながっています。

委員長は各組織の責任者が指名し、活動は社員主体で進められており、その取組は人事評価にも反映されています。

例えば、東京中央支店のSmileプロジェクトでは、社員意識調査の結果から抽出した課題から3つのテーマを設定し、それぞれのチームを立ち上げました。

うち、「キャリア&モチベーション」チームでは、現場では忙しさからキャリアについて考える時間が十分に取れておらず、面談シートに5~10年後の将来像を記入する欄があっても具体的に書けない社員が多いこと、また社内にどのような仕事があるか知らない社員が多い」という状況が見えてきました。

こうした課題を受けて企画したのが「キャリアデザインセミナー」 です。

2023年は本社の人財開発部門(キャリア開発担当)に講義を依頼したのですが、受講者が聞き手に回りやすい傾向があったことから、2024年からは参加型の形式に変更しました。カフェを会場に、職種ごとのブースを設け、各分野で活躍している社員19人に座談会形式で登壇してもらいました。参加者はコーヒーを片手に自由にブースを回り、仕事内容やキャリアについて話を聞けるようにしました。

開催時期は、9月の面談に向けてキャリアを考えるきっかけになるよう、その前の7月に設定しました。時間は30分×3セットで実施し、各ブースの滞在時間も自由です。じっくり30分ずつ3箇所ブースを回ることも、10分ずつで全てのブースを回ることも可能にしました。忙しい現場だからこそ、少しの時間でも仕事の手を止めて、自分のキャリアについて考える機会をつくりたいという想いを企画に込めています。

キャリアデザインセミナーのフライヤー(一部加工)

セミナーは大変好評で、これまで知らなかった仕事に出会えたり、目標を見つけたりする機会となりました。目標が見えてきたことで、今の仕事の中でどのような経験を積むべきかを考えるようになり、学びへの意欲が高まったり、今の業務を将来のキャリアにつながる経験として捉える参加者もいました。

なお、登壇を依頼した佐伯さん(前出)は、「自分の仕事の棚卸しになり、これまでの学びをアウトプットすることで今の仕事がより楽しく感じられた」と言ってくれました。

当社には多くの研修機会が用意されており、学びの環境には恵まれています。一方で社員が受け身になりがちな面もあります。でも、このセミナーのような取組を通じて、5~10年後の姿を実現するために今必要な学びを知り、自ら手を挙げて研修を受講する社員が増えたと感じています。

キャリアを会社主導から社員主導にする制度の実現を目指す

当社の研修は、基本的に希望者が自ら手を挙げて受講するのですが、2025年は前年より約1割増加、4年前からは1.8倍になっており、自主的に学ぶ社員が増えています。

ただ「キャリア自律を根付かせる」とは言っているものの、上司や現場によって温度差があるように感じています。もっと「キャリア自律」の理解度を深めて、これをベースに考えて行動できるようにする必要があります。

なぜなら、今後は事業環境の変化に合わせることができないと会社の成長が見込めなくなるという思いがあるからです。変化に対応できる人財を育成し、社員自身の成長と事業の成長を循環させるには、「キャリア自律」が重要です。

ただ、キャリアを描いても、本当に実現できないと絵に描いた餅になってしまいます。そのため、今後はキャリアを会社主導から社員主導にして、社員のWillを起点とした人財配置を実現したいと考えています。例えば、現在約5%の社員が社内公募を使っていますが、5割まで高めるのが当面の目標です。

社員一人ひとりが自分のキャリアビジョンを描き、上司がその実現に向けて制度の活用を後押しできる環境づくりが今後の課題です。社員が「挑戦し続ける」「自己成長し続ける」組織風土を目指し、今後もキャリア自律の取組を推進していきたいと考えています。

本事例に該当する

職場における学び・学び直し促進ガイドラインのⅡ 労使が取り組むべき事項

Company data企業データ

株式会社JTB
代表取締役:山北 栄二郎
所在地:東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター
従業員数:20,029名(グループ全体 2026年3月31日現在)
創業:1912年
資本金:1億円
事業内容:生活関連サービス業・娯楽業
企業HP: https://www.jtbcorp.jp/jp/

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