2026年2月05日
スキルと給与を見える化した評価制度「大夢道」で、職人世界特有の育成課題を解消
株式会社ダイムワカイ
事業内容:金属屋根材の製造・販売・施工
- 業種
- 建築板金業
- 地域
- 京都府
- 従業員数
- 50人~99人
- 取り組みの概要
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ポイント1
直面していた課題
- 職人が減少し「見せて教える」に限界
- 若手はどうしたら給料が上がるか見えず過酷な環境から退職も
- 納品の品質がバラバラでクレームも発生
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ポイント2
取組と成果
- 取得すべき技能・知識と給料を明確に
- わくわくできる工夫で、スキルアップと自主的な学び合いを促進、退職も減少
- 品質向上でリピートにつながり、増収分を社員に還元
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- 取り組みの成果
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スキルと給与を見える化した評価制度「大夢道」で、
職人世界特有の育成課題を解消
※本記事の内容、役職、部署名は取材当時のものです
高性能防水屋根材「パーフェクトルーフ」を中心に、金属屋根材等の製造・販売・施工を展開する株式会社ダイムワカイ。職人世界における育成の課題を解決すべく、取得すべきスキルと給与を体系化・明確化した評価制度「大夢道」構築の経緯と内容、導入効果、実際の社員の声をご紹介します。
「見せて教える」職人育成の限界を打破したい
職人の世界は、親方が若手を何人も抱え、見せて教えるのがこれまでのやり方でした。しかし近年、働き手の減少にともなって親方も忙しくなり、若手を教えるのが難しくなっています。
当社はこれまで、屋根を取り付ける板金作業を外部の職人にすべて委託していました。しかし、今後は職人のさらなる減少が見込まれることから、職人を自社の社員として採用し、育てていこうと考えました。
ただ、屋根の板金作業は同じ現場が2つとして存在せず、一つひとつ見て覚えるのは非常に困難です。職人は技術が身につけば給料が上がるはずなのに、若手はどうやって技術を高めたらいいか分からず、いつ給料が上がるか見えない、という課題がありました。
そこで、自分の実力で給料が上がるのをわかりやすく形にしようと構築したのが、評価制度「大夢道」です。
実は当初、板金の学校を作り、そこに協力会社も入って学んでもらおうとしていたのですが、設立の条件等が難しく断念しました。ただカリキュラムはある程度できていたので、これを「大夢道」に活用しました。

創業者であり故会長から大夢道構築の命を受けて形にした山中社長室長(左)
「黒帯」は親方の証、昇級=昇級、飛び級もOK



「大夢道」は、取得すべき技能のレベルとそれに見合った給料を段階別に設定して、試験で判定する評価-給与制度です。社名のダイム(大夢)に、剣道や柔道の「道」をつけました。
レベルは10級から3段まで設定しています。何事も続けるには「わくわく楽しく」という発想から、「黒帯」のように作業服を黒っぽくすることで、憧れがもてるようにしました。「黒帯」は4級で、現場で長になり人にも教える、つまり「親方」といえる技能を持つ証です。
昇級試験として、筆記と実技を年1回行います。実技は、課題として図面を渡して実際に板金作業を行い、仕上がりの寸法や角度を測って採点します。
試験の内容は、職人に教わりながら、技能と知識の難易度を各級の基準に落とし込みました。どの程度の技能を習得すれば「一人前」と言えるか、実際に現場で通用するかどうか、にこだわって作成しています。
各級の難易度に見合う給料を設定して「昇級=昇給」とすることで、どのレベルになれば給料がいくらになるかを明確にしました。飛び級も可能にしており、給料が先輩を抜くこともありますが、実技試験という目に見える基準があるので、誰もが納得するものになっています。
級から段位になると、筆記と実技に加え、職業訓練校の指導員資格等の取得と、指導的立場にふさわしい人物かを見極める役員面接に合格する必要があります。
「大夢道」を開始して8年で、現在黒帯が4名。段位は3名誕生しており、実技試験の試験官をつとめています。
スキルアップが社員のやりがいを生み、主体的な学び合いも
これまでは、職人へ外注すると、個人によって屋根を取り付けた際の出来栄え(「納まり」といいます)が違い、時にはクレームになることもありました。
しかし、社員のスキルが上がると、当社の「納まり」で納品できるようになります。お客様に満足いただけることで、リピートが生まれ、その際単価アップの交渉材料にもなって、会社の増収につながっています。その分は社員に還元しています。
社員にとっては、スキルアップをすれば、まず給料が上がります。
昇級して現場の長になると、外注の職人を使う立場になりますが、クセのある職人に対して「なぜこの方法がいいのか」堂々と言えるようになります。すると、よりよい「納まり」で納品できるようになってお客様に喜ばれ、やりがいにつながっていると思います。
最近は、退職が落ち着いてきました。屋根の板金作業は高所で夏は暑く冬は寒い、という厳しい労働環境もあってか、入社しても1年持たない若手が出てきます。「大夢道」の効果かどうかは分かりませんが、今いる若手はがんばってくれていますね。
なお、希望する若手社員には、県内の板金学校に会社の全額負担で派遣しており、通学日は出勤扱いで給料も支払っています。これも励みにしてくれているのではないかと感じています。
社員からの提案で、ダイムワカイの「納まり」を決めようと定期的に勉強会を開催しています。職人が集まって、実際に作業をしながら技術を追求しており、こうした主体的な学び合い・高め合いも生まれています。


社員の方の声

松井さん
最初は辞めたいと思うこともありましたが、言い方のきつい職人さんに思い切って「教えて下さい」と言ったら教えてくれて、それが自分でできるようになると、仕事が楽しくなってきました。これからは、年下の子と一緒にやっていろいろ教えてあげたいです。
大夢道は試験が年1回しかなく、これを逃すとしばらく上がらないので、やる気につながっています。実技試験は形が決まっていますが、いざ現場でやってみても通用しないことがあるので、現場で活かせる試験内容にしてもらえたらいいなと思います。

山崎さん
職人がかっこいいと思っていて、技術のいる仕事がしたくて入社しました。最初は不安でしたが、やっているうちに、道路から自分が担当していた現場を見て、手がけたものが形として残ることに達成感があって、今まで続いています。
大夢道は、がんばって級を上っていくしかないですね。試験前には「1ミリ合っていない」などと、みんなで指摘し合いながら実技課題の練習をしています。
限られた人を活かす「多能工」を育てる仕組みを


今後は、社員の数が限られているので、1つのことしかできない人材より色々なことができる「多能工」を育てる仕組みをつくりたいと考えています。
たとえば、経理の事務員がCADを使った設計もできるようになったら「黒帯」で、スキルを取得したぶん昇給するーーーいわば「事務の大夢道」です。明確なレベル設定をすることで、事務職のように給与体系が分かりにくいに職種でも、納得感が生まれるでしょう。
現在、職人以外の営業や設計といった社員には「成長記録シート」に年間目標を記入して提出してもらっています。
また、単位制の企業内大学として、先輩社員が後輩社員に教える取組をしています。当社の社員は、建築を専門に学んだことのない未経験者がほとんどです。かつて素人だった先輩が教えることで「そんなこともできないの?」ではなく「まだ教えていなかったね」と言える風土になっています。
これらを土台に「事務の大夢道」を実現させて、様々なことを学ぼうとする姿勢に報いたいですね。
職人向けの「大夢道」も、まだまだ改善の余地があります。
実技試験の内容が現場で通用しないことがある、という声があるため、より実態に近いものにする必要があります。前述の勉強会を通じて「こういう試験どうや」という意見をもらい、ブラッシュアップしていきます。
「学びと教えは、不可能を可能にする」
これは、故会長の言葉です。私達が学び取り組んでいることを、他の板金業界の企業にも教えられるようになれたらと思っています。

Company date企業データ
- 株式会社ダイムワカイ
- 代表取締役:石川孝一
所在地:京都市下京区中堂寺前田町34番地
従業員数:80名(2025年12月1日現在)
創業:1947年
資本金:20,000,000円
事業内容:金属屋根材の製造・販売・施工
企業HP: https://dymwakai.co.jp/
Company case企業事例
学び・学び直しに取り組む企業の事例をご紹介いたします。
各企業が抱える課題や成功のポイントについて具体的な内容を掲載しておりますので、是非ご参照ください。
事例は順次追加予定です。

