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有限会社たかえん

2025年3月26日

経営者自ら伴走支援を行い
社員とともに会社の未来を描く

有限会社たかえん

事業内容:デリカフェの運営、惣菜・焼菓子の製造販売

業種
製造・小売・飲食サービス業
地域
秋田県
従業員数
10人未満
取り組みの概要
  1. ポイント1

    • 学び・学び直しにつながる経営指針を従業員と相談をしながら作成
    • 従業員の興味関心を優先して学び・学び直しの内容を決定
  2. ポイント2

    • 少人数の会社ならではの距離の近さをいかし、綿密なコミュニケーションで従業員の考えや価値観を把握
    • 経営者自ら研修に同行するなど、従業員と並走するような支援を実施
  3. ポイント3

    • 社内だけではなく社外にも学び・学び直しの機会を豊富に用意
取り組みの成果
社員が自分の仕事に誇りを持ち、
事業転換や事業拡大にも主体的に参加

※本記事の内容、役職、部署名は取材当時のものです

昭和初期に秋田県平鹿郡(現横手市)で事業を開始し、呉服店をはじめとする衣料小売店の経営などを経て、現在では惣菜や焼菓子の製造販売と飲食店の運営を主力事業としている有限会社たかえん。2008年に「デリカテッセン&カフェテリア紅玉(以下、「紅玉」)」を開店し、従業員とともに事業領域を拡大。オープン当初はテイクアウトが中心だったが、現在では店舗内での食事の提供やデリバリー、仕出し弁当の販売なども行う。地元特産の果物やそれを使った焼菓子を全国に販売するなど、農と食をつなぎ、地域の魅力を発信する活動にも積極的だ。同社の発展に欠かせなかったという学び・学び直しの取組について、代表取締役の髙橋基さんにお話を伺った。

学び・学び直しの取組には失敗も多かった

かつては衣料小売店の運営やリサイクル事業を収益の柱としていた同社だが、時代の変化とともに新事業へと軸足を移し、それに伴い従業員の配置転換も必要になった。配置転換の都度、髙橋さんは従業員と綿密なコミュニケーションをとった。たとえばリサイクル事業から外食事業への配置転換においては、業務内容が大きく変わることから、事前に対象となったパート従業員と面談を重ねて意思を確認した。「いずれ正社員になりたい」「自分の能力を高めたい」といった従業員の思いを受け、髙橋さんは厚生労働省のキャリアアップ助成金を活用し、3ヶ月の移行期間を設けて従業員の学び・学び直しを実施して、正規社員としての登用と新たな舞台での活躍を実現させた。このような取組を続ける中で、髙橋さんの学び・学び直しに対する考え方に変化が生じたという。

県外の大学を卒業後、帰郷して家業の衣料小売店に入社した髙橋基さん。2015年に5代目として代表取締役に就任した

髙橋さん:じつは学び・学び直しの取組を進めるなかで、本人があまり成長を望んでいないのにスキルアップを求めたり、「どう成長したいか」という一人ひとり違う考え方に対応できなかったりと、失敗も多かったんです。でも、失敗を重ねるうちに、私たちなりに「こうしてみようか」というチャレンジの方向性が見えてきました。

当初は学ぶことになかなかなじめない従業員もいたそうだ。髙橋さんは、会社側が考えた「あるべき姿」に従業員を当てはめようとし過ぎたのではないかと当時を振り返る。

髙橋さん:いまは、一人ひとり異なる社員の考え方や会社へのロイヤリティのようなものを最初の段階で見極めてから、次のステップを探っていく流れになっています。

会社と従業員がともに学び・学び直しに取り組むには

ポイント1、2
学び・学び直しにつながる経営指針を従業員と相談をしながら作成、従業員の興味関心を優先して学び・学び直しの内容を決定
少人数の会社ならではの距離の近さをいかし、綿密なコミュニケーションで従業員の考えや価値観を把握

髙橋さんは学び・学び直しを労使ともに進めていくにあたり、まずは経営指針の内容やつくり方を改めることにした。

髙橋さん:経営指針は2007年からつくりはじめましたが、当初は私の考えを社員に知らしめるような内容でした。使用者側の要求が前面に出てしまい、経営指針の体裁になっていなかったんです。歩み寄ってくれる社員もいましたが、当然のことながらハレーションが起こってしまうこともありました。こういった失敗を経て、いかに合意形成するかを重視し、社員の考えも経営指針に盛り込むようにしました。

従業員の考えや価値観を汲みとるために、一人ひとりとコミュニケーションを重ねて信頼関係を築いた。

髙橋さん:少人数の会社ですので、経営者と社員との距離がとても近いと感じています。いわゆる1on1的な定期的な面談の制度を設けたこともありましたが、お互いに緊張してしまい腹を割った話ができませんでした。そこで、形に拘るのではなく、日常的なコミュニケーションを積極的に行い、思いついたことや疑問に感じたことなどがあればすぐに聞くようにしたことで、信頼関係が構築されていったように感じています。

そのとき聞き取ったことはメモにまとめ、それをどう経営指針に盛り込むのか、改めて従業員と話し合うのだという。また、同社では経営指針に基づいて年度計画を立てており、その達成に向けて従業員が強みや持ち味を発揮するために、どのような学び・学び直しが必要かということも従業員一人ひとりと擦り合わせる。さらに、従業員の意向や個性に応じた「仕事づくり」を行うことも多いのだという。

髙橋さん:当社では地域の特別支援学校からインターンを受け入れることもあるのですが、最初の頃は簡単な作業を任せるだけになりがちでした。しかし、あるインターン生の行動に注目してみると、ほかの社員が担当していた弁当の盛り付けを興味深そうに見つめていることに気づきました。そこで、そのインターン生に盛り付けの仕事をしてもらったところ、時間はかかったのですが、非常にきれいに仕上げてくれたんです。

こういった経験をもとに、髙橋さんは、経営者自らが従業員の興味・関心事を知り、それをもとに仕事をつくったり学び・学び直しの機会を設けたりすることの重要性を実感したのだという。

「紅玉」では地域の特産品を使用した商品を多数展開している

ポイント2、3
経営者自ら研修に同行するなど、従業員と並走するような支援を実施、
社内だけではなく社外にも学び・学び直しの機会を豊富に用意

学び・学び直しの具体的な内容を決めるときは、従業員にできるだけ多くの選択肢を示すのだという。そして、自主的に選択してもらった学び・学び直しを進めるにあたって、髙橋さんは従業員と並走するような形で支援を行う。

髙橋さん:いまどきの方法ではないのかもしれませんが、お互いの距離感をできるだけ詰めるようにしています。単に仕事上の付き合いの人が隣にいるのと、本当に信頼できる人が隣にいるのとでは、本人の頑張りようも違ってくると思うんです。外部の研修を受けるときも、私が同席するようにしています。研修の内容について、私と社員がそれぞれ違った角度で捉えていることも多いので、それを擦り合わせたりディスカッションしたりすることが大切だと考えています。そういった意味では、伴走支援というよりも、道しるべのない道をどちらに行こうかお互いに相談しながら進んでいるようなイメージです。

また、髙橋さんがりんご生産者や県外の企業といった取引先と接する機会があるときは、若手の従業員を伴うことが多いそうだ。

「紅玉」の2階にあるカフェテリアは、地域の人々の憩いの場になっている

髙橋さん:当社は本当に恵まれていて、仕入れ先であるりんご農家をはじめ、素晴らしい仕事をされている取引先がたくさんあります。研修もそうなのですが、学び・学び直しにつながる外部の方々との出会いの場をつくることが大切だと考えています。私自身、ロールモデルとなるような人の背中を追うことが大きな学びになった経験があるからです。

このほか、同社では土地柄や環境に応じて、新たな学び・学び直しの形も探っているのだという。

髙橋さん:田舎ですので、たとえばパンフレットやニュースレターの作成といった広報業務に必要なスキルを身につけたいときに、近隣に適した学校や研修先がありません。そこで、サブスクリプション型のオンライン研修の導入を検討しています。

従業員とともに、多様な計画を検討できるように

以上で取り上げたように、地域との結びつきを直に感じられる業務を通して学ぶことで、従業員が自分の仕事に誇りを持てるようになったという。

髙橋さん:当社にとって、事業の継続発展と地域の振興は両輪のような関係です。地域のりんご農家のもとに若手社員が訪問したときに、自分たちの仕事の意味や、事業と社会貢献は不可分であることを実感してくれたようです。

また、学び・学び直しの積み重ねの結果、事業の転換や事業の拡大にも、従業員が主体的にかかわるようになったそうだ。

髙橋さん:コロナ禍においても実績を上げることができたのは、社員の成長あってのことです。当時は中食(テイクアウトやデリバリーなど)の提供を中心とするように業態を転換したのですが、それは社員がSNSなどを通じてリサーチをし、外食は難しいがテイクアウトなら……と提案してくれたことがきっかけになりました。また、地域でクラスターが発生し、街が閑散としてしまったときもあったのですが、社員自ら「この会社がつぶれたら困る」といろいろな支援策を見つけてきてくれて、本当にうれしかったですね。

学び・学び直しによって成長した人材や、インターンシップなどで同社の理念に共感し入社した人材によって、今後の事業規模の拡大も描けるようになった。

髙橋さん:「紅玉」と同じような店をもう一店舗つくったり、高齢化で経営が難しくなった地域の事業を引き継いだり、あるいは地域の生産者とのかかわりをもっと増やし、ゆくゆくは生産から加工、流通までを手がけられるようになったりと、いろいろな計画を検討しています。

その実現のためには、新たな学び・学び直しも必要になるだろう。「成長の機会をつくり続けることが、経営者の仕事です」と語る髙橋さんのもとで、従業員がどのような成長を遂げ、同社がどのように発展していくのか、大きな期待を抱かせる事例となった。

事業規模の拡大を視野に、新卒採用も進めていきたいと意欲を見せる髙橋さん

本事例に該当する

職場における学び・学び直し促進ガイドラインのⅡ 労使が取り組むべき事項
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Company date企業データ

有限会社たかえん
代表取締役:高橋基
所在地:秋田県横手市十文字町字曙町6
従業員数:5名(2025年1月時点)
創業:1928年
資本金:900万円
事業内容:デリカフェの運営、惣菜・焼菓子の製造販売
企業HP:https://kougyoku-deli.jp/

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