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ダイキン工業株式会社

2025年3月26日

若手からベテランまで、
一人ひとりが活躍できる企業へ

ダイキン工業株式会社

事業内容:空調機、化学製品の製造

業種
製造業
地域
大阪府
従業員数
301人~
取り組みの概要
  1. ポイント1

    • 経営トップが強力なメッセージを発信し、人材開発の担当部署や担当者をサポート
    • 人材開発にかかわる理念を経営層が折に触れて発信
  2. ポイント2

    • 企業内大学の設置により入社後2年間学びに専念できる体制を実現
    • 間接業務の効率化を進め、学び・学び直しを実施するリソースを捻出
  3. ポイント3

    • 企業内大学の履修2年目にはスキルをいかせる現場で実践
    • 事業環境の変化には、従業員に必要な教育を行った上での業務変更で対応
取り組みの成果
多様な人材をいかす学び・学び直しの取組で
イノベーションに向けての土壌が醸成

※本記事の内容、役職、部署名は取材当時のものです

総合空調専業企業としてグローバルに事業を展開し、一般の生活者にもエアコンや空気清浄機などで馴染み深いダイキン工業株式会社。「従業員一人ひとりの成長の総和が企業の発展の基盤である」という信念のもと、「人を基軸に置く経営」を推進する同社は、企業内大学「ダイキン情報技術大学(以下DICT)」を設立するなど、学び・学び直しの取組においても注目を集めている。同社の役員待遇で人事・労務・労政グループ長を務める今井達也さんをはじめ、同社で学び・学び直しを推進する方々にお話を伺った。

競争が激化する市場で勝ち抜くために

世界170ヶ国以上に製品を展開し、グローバルメーカーとして業績を拡大してきた同社だが、近年は新興国メーカーの台頭やIT企業の参入などで競争が激化。モノづくりだけに留まらず、顧客の潜在的ニーズを掘り下げたコトづくりなど新たな領域を目指したが、それを担うDX人材が不足していた。

もともとはコンプレッサーの開発を担う技術者で、自身も大きな職種転換を経験したという人事本部の今井達也さん

今井さん:当社は空調機の専業メーカーですので、空調機以外の製品も扱う競合他社と比較してDX人材が非常に少ないことが課題でした。DX人材の獲得競争は激化しており、外部からの採用も苦戦していました。

定年の延長によって10年後には60歳以上の人材が全体の20%ほどにまで達する見込みもあり、持続的に成長・発展するためには既存の社員の能力をさらに引き出していく必要もあった。

今井さん:当社は、企業の競争力の源泉はそこで働く「人」の力だと考えています。こういった信念のもと、これからもこのマーケットで戦っていくために、「自社で一からDX人材を育てることが急務である」ということになったんです。

学び・学び直しの両輪となった企業内大学と
ダイバーシティマネジメント

ポイント1、2、3
経営トップが強力なメッセージを発信し、人材開発の担当部署や担当者をサポート
企業内大学の設置により入社後2年間学びに専念できる体制を実現
企業内大学の履修2年目にはスキルをいかせる現場で実践

長年蓄積されたハード面のノウハウに、AIやIoT分野の知見を融合してイノベーションや抜本的改革を担える人材を育成するべく、同社では2017年に企業内大学「DICT」を開設した。

今井さん:当初は半年間のプログラムを検討したのですが、「半年では中途半端。しっかり学びの時間をとり、大学のマスターコースで学んだ情報系人材と同じレベルを目指す」という経営トップの力強いメッセージにより、学びに専念する時間を2年間とることになりました。

初年度は技術系の新卒従業員約300人のうち、100人がDICTの新卒コースで学ぶことになった。「ダイキンを牽引するパイオニアになろう」というメッセージに呼応し、希望者は定員を超えたという。新卒コースでは、1年目は特定の事業部門に配属されず学びに集中するが、2年目は部門に入り、課題を解決するプロジェクト研修などを行う。

今井さん:部門に入ることで、現場を知るだけではなく、そこでの経験を通して自分の長所や短所をつかむこともできます。そうやって自分自身を知ってもらったうえで、DICTでの学びを終えたあとの配属先の希望を聞き取ります。私たちも2年間の学びの様子を通して、それぞれの人材の適性やスキルをつかんでいますので、本人の希望と擦り合わせながら配属先を決めます。

重要なのは、DICTの受講生は「実践の場」を見据えた上で学んでいるということだ。学びに際し、「この仕事に必要だから学ぶ」「自分が学んだことを、いかに業務につなげていくか」といったマインドセットを育むことが重要視されており、またそれに応えるためにDICTで学んだあとは、学んだことが活かせる部署での兼務が当たり前になるなど、多様な実践の場が用意されている。

DICTでの学びの様子

ポイント2、3
間接業務の効率化を進め、学び・学び直しを実施するリソースを捻出
事業環境の変化には、従業員に必要な教育を行った上での業務変更で対応

このようにDICT修了生にそれぞれが身につけたスキルを発揮できる環境を整え、その後も定期的なフォローアップを実施した結果、リーダーとして早くから活躍する人材もあらわれ、ほかの社員との学び合いも活性化した。また、DICTでは既存の従業員向けの講座も階層的に展開。そのほか全従業員を対象に、デジタル技術に関するeラーニングも実施した。 同社では事業環境の変化があっても、安易に外部人材に頼らず、まずは内部人材をいかすこと大切にしているため、DXに限らず、あらゆる層の従業員の能力を引き出す取組を行っている。こういった学び・学び直しを実施するリソースを捻出するために、DXを活用した間接業務の効率化も進められた。

今井さん:部門それぞれに効率化できることが数多くありました。効率化を進めることにより、従業員が新しいことや強化テーマにもっと取り組めるようにしたいと思っていたんです。この間接業務の効率化にも、DICT修了生の学びがいかされています。

ポイント1
人材開発にかかわる理念を経営層が折に触れて発信

同社では、従業員がベテランになっても長く活躍するための取組も古くから行っている。人事本部でダイバーシティを推進する今西亜裕美さんは、「ダイキンは年齢に関係なく働けるのが当たり前の会社」だと胸を張る。

今西さん:当社では、20代の社員がプロジェクトのコア人材となり、その社員を長年の経験があるベテラン社員がサポートする、といったシーンも珍しくないんです。

空調事業において豊富な経験を持つベテランとAIを学んだ若手従業員が力を合わせることで、革新的な取組が生まれることを期待しているという。

今西さん:2021年に再雇用制度を見直して、希望者は最大70歳まで働けるように雇用の年齢を拡大しました。それに伴い、ベテラン社員がより活躍できるように、仕事の幅や機会の拡大、意識・行動の改革といった取組も推進しています。

その一環として、全管理職を対象に、ベテラン層の意欲や能力を引き出すためのマネジメントや、若手や中堅も含めた組織活性化のポイントを学ぶセミナーなどを開催している。また再雇用者向けには、これまでのキャリアで培ってきた強みや、大切にしてきた価値観を、今後の活躍につなげていくための研修も実施。さらに、再雇用者とその上司との対話の場を設け、相互理解を深めながら、業務の内容や目標設定の擦り合わせも行なった。加えて、2024年4月には定年年齢を65歳まで拡大させ、ベテランの活躍をさらに進めている。

人事本部でダイバーシティ推進グループ長を務める今西亜裕美さん

今西さん:同質性の高いチームよりも、異質なメンバーでチームを構成できるようにしたほうが、イノベーションが生まれやすくなります。当社の名誉会長も「同じ色の絵の具を混ぜると同じ色にしかならないが、いろいろな絵の具を効果的に混ぜることで素晴らしく美しい色になる」といったことをよく話しています。

このように同社では、経営層が折に触れて、人材開発にかかわる理念を従業員に発信しているそうだ。従業員の学び・学び直しへの意欲が向上するだけではなく、それを推進するマネジメント層や事務局にとっても、大きな助けになっているのだという。

学び・学び直しで新たな事業モデルを

DICTをはじめとする同社の学び・学び直しの取組はまだ過渡期にあるというが、すでにさまざまな成果があらわれている。

今井さん:DICT生については、基本情報技術者試験の合格や統計検定の2級取得は修了のために必須としており、100パーセント達成できるようになりました。2年という長い期間、収入を得ながら勉強できる環境が、学びへの強い意志やほかのメンバーとの競争意識につながったようです。

DICTの履修生や修了生の活躍は、設備機器の運転データの技術移管やその手法の教育活動をはじめ、大学との共同開発、営業業務の高度化・生産革新に向けたAIやIoTの活用、MR技術・画像処理といった新規技術の社内導入など、部門を問わずに広がっている。経営トップによる社長表彰制度においても、直近の受賞案件49件のうち、13件の取組に履修生や修了生が関わっていたという。

今井さん:DICT設立時に立てた「2023年度末までに1500人のDX人材を育成する」という目標も達成できました。学び・学び直しの浸透も進み、スキル不足などによる職種転換も減ってきました。常に新しいスキルを身につけるのが当たり前になるような社内風土をつくっていきたいですね。

今井さんは、製造の効率化というプロセス・イノベーションはすでに実現し、今後は新たな事業モデルをつくり出すビジネス・イノベーションを加速させたいと先を見据える。

また、厚生労働省では「労使協働での人材育成への取組」をガイドラインで掲げているが、ダイキン工業では、会社と労働組合が活発に協議を行っており、従業員の率直な意見を聞き、人材育成やマネジメントに関する課題等があれば改善するなど、労使協働で学び・学び直しの風土づくりや環境整備につなげているという。
学び・学び直しをもとにした、新時代を切りひらくようなイノベーションの実現に期待を抱かせる事例となった。

2024年4月現在で、新卒コース440名、既存社員向けコース約1,300名がDICTを受講済みだという

本事例に該当する

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Company date企業データ

ダイキン工業株式会社
取締役会長兼CEO:十河政則
所在地:大阪府大阪市北区梅田1-13-1 大阪梅田ツインタワーズ・サウス
従業員数:単独7,654名 連結98,162名(2024年3月31日現在)
創業:1924年
資本金:85,032,436,655円
事業内容:空調機、化学製品の製造
企業HP:https://www.daikin.co.jp/

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