2024年8月09日
社員も主体的に会社の未来を描き、
実現に向けて全社一丸となって学びに取り組む
株式会社山本製作所
事業内容:穀物乾燥機や各種選別機をはじめとする農業機械や
環境関連機器などの開発・製造・販売
- 業種
- 製造業
- 地域
- 山形県
- 従業員数
- 100~300人
- 取り組みの概要
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ポイント1
- 戦略策定などの難しい取組を遂行するスキルを身につける研修をオーダーメイドで設計
- 最後まで主体的にやり遂げられるように綿密なコミュニケーションで支援
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ポイント2
- スキルマップを見直し、部門ごとに求められる能力や必要な学びを明確化
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ポイント3
- スキルマップや部門方針に基づいた1on1やフィードバックを実施
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- 取り組みの成果
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学びを支援する体制の構築によって、
従業員の意欲や当事者意識も向上
※本記事の内容、役職、部署名は取材当時のものです
株式会社山本製作所は1918年に創業し、蚕糸用桑切機の製造・販売を経て、穀物乾燥機や籾摺機といった農業機械の分野で業績を拡大。一般の生活者にはコイン精米機でも馴染み深い機械メーカーだが、農業分野以外にも発泡スチロール減容機、ペレットストーブといった多様な環境関連機器を手がける。「人をつくり、商品をつくり、豊かさをつくる」という経営理念に則り、人材開発を第一に掲げ、近年も学び・学び直しの新たな取組に挑戦している。執行役員の轟克久さんをはじめ、従業員の方々に同社の取組についてお話を伺った。
社内に体系立った人材育成の仕組みがなかった
同社は主力製品としていた農業機械の市場縮小を受け、新規事業や事業拡大への取組を進めてきているが、その中で人材面の課題に気がついたという。
轟さん:新規事業や事業拡大に必要な戦略策定を行うスキルが会社として不足しているように感じていました。さらなる成長を目指すための人材の育成は急務でした。
社内で人材開発の制度づくりを牽引する轟克久さんがそう語るように、業務に必要な知識や技術だけではなく、新しいことに積極的に取り組む力が求められた。しかし、同社では新人研修を除いて研修体系が整備されておらず、配属後は各部門での判断に任せていたそうだ。
轟さん:以前は部門の状況や管理職の考え方によって人材育成に関する対応がまちまちだったんです。これではまずいと感じ、経営理念に立ち返って、改めて体系立った教育や研修ができる仕組みづくりをはじめました。
中期経営計画の策定を担うことで得る学び
ポイント1
戦略策定などの難しい取組を遂行するスキルを身につける研修をオーダーメイドで設計、最後まで主体的にやり遂げられるように綿密なコミュニケーションで支援
同社の人材開発の特徴的な取組として、全社における中期経営計画のドラフトの策定を、中堅の従業員が担っていることが挙げられる。25〜30名程度のメンバーが集まり、今後5年間の計画を、1年近くかけて策定する大掛かりな取組だ。
轟さん:実は私も、10年ほど前に中期経営計画のドラフトを作成するメンバーに選ばれたことがあるんです。当時は、ドラフト作成に必要なスキルを得るための研修や参考書などが提供されることもなく、暗中模索で取り組んだ辛い記憶が残っています。ドラフト作成に関わるのは名誉なことですが、それが辛い経験になってしまっては、せっかくの学びの効果が損なわれます。あとに続く人材が、ドラフト作成のメンバーに選ばれることを嫌がらないようにするためにも、戦略策定に関する基本的なスキルを習得してもらう機会を用意しました。
轟さんは、経営やマーケティングに関する知識を身につけ、自社の置かれた環境や状況を踏まえて戦略策定を行う技術を得るための講座を、中小企業大学校と連携してオーダーメイドで設計した。実際に、ドラフト作成チームにリーダーとして参加した山本拓哉さんは、オーダーメイド講座での学びはもちろん、取組自体にも成長の機会があふれていたと語る。
山本さん:講座で学んだことをもとに、当社が抱える課題を抽出し、部門をまたいで参加したメンバーと話し合いました。ほかの部門の人たちの事情や考えを知ることで、「部分最適」から「全体最適」へ意識が変わるなど、非常に学びが多かったですね。
メンバーで考えた計画案を役員に提案した際は、厳しい指摘を受けることもあったが、最後まで主体的にやり遂げられるように、上層部も根気よくコミュニケーションを重ねてくれた。
山本さん:大変でしたが、完成したときには達成感とともに、自分たちで考えた計画に対し強い責任感を持つことができました。
従業員ごとに必要な学びを明確にし、どう学ぶかを擦り合わせる
ポイント2、3
スキルマップを見直し、部門ごとに求められる能力や必要な学びを明確化、
スキルマップや部門方針に基づいた1on1やフィードバックを実施
同社ではオーダーメイド研修以外にも、さまざまな研修を活用している。轟さんが部員に研修を提案するときは、部署内で1on1を実施するなど、学び・学び直しの方向性や目標の擦り合わせを行うのだという。
轟さん:社員が学びたいときに、学びたい研修を提供することで、必然的に学び・学び直しへのモチベーションが高まるように感じます。部署の方針や目標を社員に示し、それを実現するために「目指すべき姿」を一人ひとりと共有することを心がけています。
その手段として、轟さんは他部署とも連携して全社的にスキルマップを見直すことにした。それまでもスキルマップは存在したが、これも各部門に丸投げといった状態で、あまり活用されていなかったという。部門ごとに求められるスキルを洗い出し、実情を踏まえたスキルマップとして整理し直すことで、従業員一人ひとりの「目指すべき姿」を描きやすくなり、個々の学びを効果的に提案することができる。もともと同社の従業員は、地元自治体や商工会議所が主催する無料のセミナーなどには積極的に参加していたが、費用が生じる研修には、会社負担であっても参加をためらうような傾向があったそうだ。
轟さん:お金を払って学ぶことには、当然準備や覚悟が求められます。スキルマップの整理には、学ぶべき理由を明確にする意図もあったんです。
経営管理部の戸村千明さんも、部門長とともに自身の学び直しに取り組んだ一人だ。
戸村さん:最初に部門長との面談があり、そこで自分の課題が明確になったことで、必要な知識や足りないスキルが見えてきました。今回は業務に役立つ検定に合格することを目標にしたのですが、自分一人でがんばるのではなく、部門長をはじめ会社が応援してくれている感覚がありました。
このような部門長による支援を行うためにも、轟さんは一般社員だけではなく、役員や管理職が率先して学び・学び直しを実践することが必要だと強調する。
轟さん:これまでは教育というと、若い社員が対象だと考える人が多かったんです。しかし若い社員にしてみれば、上司や管理職が学ばないのに、なぜ自分だけが……という気持ちになるでしょう。そこで、上層部からしっかり学び直しをする取組もはじめました。
さらに、轟さんが部長を務める経営企画部では、正式に「学び直しの推進」を部門方針として打ち出している。
轟さん:まずは部門単位でスモールスタートしたのですが、方針を理解してくれたメンバーが積極的に研修を受け、また受講後には学んだことをレポートで共有してくれています。いま進めている研修体系の整備などと合わせて、今後は全社的に学び直しを推進していきたいと考えています。
学び・学び直しの今後に期待がふくらむ
このように同社では、従業員自身による中期経営計画の策定について伴走支援を行うことで、学び・学び直しとしての機会やその効果をより拡大することができた。また、戦略策定に資するオーダーメイド研修以外にも、個々の人材に寄り添った研修を提案し、学び・学び直しに意欲を見せる従業員が増えた。轟さん自身もさまざまな学び・学び直しに挑戦しているが、役員や管理職が率先して新たな知識や技術を身につけることで周囲を牽引し、機運を高めるとともに、学び直しの当事者として、従業員から質問や相談があったときにもサポートしやすい環境をつくろうとしている。
轟さん:まだ人材開発の改革に着手したばかりですので、目に見えて業績に直結するような効果は出ていません。しかし、オーダーメイド研修を受講したメンバーが作成した中期経営計画のドラフトは、過去最高の仕上がりだったと感じています。このドラフトをもとに策定した中期経営計画を推進・達成することで、具体的な成果もあらわれてくるのではないかと考えています。
中期経営計画には人材開発の要素も多分に盛り込まれ、今後、教育訓練費の増額などをはじめ、従業員が学び・学び直しをしやすい環境をつくる機運も高まっているという。同社の学び・学び直しの取組が、今後どのように発展し、どのような成果をあげるのか、大きな期待を抱かせる事例となった。
Company date企業データ
- 株式会社山本製作所
- 代表取締役:山本丈実
本社:山形県天童市(本社登記地)
事業所:山形県東根市大字東根甲5800-1(東根事業所)
従業員数:309名(2024年4月現在)
創業:1918年
資本金::9,600万円
事業内容:穀物乾燥機や各種選別機をはじめとする農業機械や環境関連機器などの開発・製造・販売
企業HP:https://www.yamamoto-ss.co.jp/
Company case企業事例
学び・学び直しに取り組む企業の事例をご紹介いたします。
各企業が抱える課題や成功のポイントについて具体的な内容を掲載しておりますので、是非ご参照ください。
事例は順次追加予定です。