2024年3月15日
従業員の意識改革からスタートし
仕事に誇りを持ちながら成長できる企業に
株式会社センショー
事業内容:各種めっき・研磨の受託加工、各種機能めっきの開発
- 業種
- 製造業
- 地域
- 大阪府
- 従業員数
- 50~99人
- 取り組みの概要
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ポイント1
- 学ぶ意欲につながる理念の浸透
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ポイント2
- 訓練校への派遣をはじめ、まとまった学びの時間を確保
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ポイント3
- 新規事業への挑戦や異動を伴う学び・学び直しを実施
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- 取り組みの成果
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社内での「学び合い」の機運醸成による、
次代を担う人材の育成
大阪市内で3つのめっき工場を展開する株式会社センショー。2011年に工場の経営を引き継ぐ形で、専務の娘だった堀内麻祐子さんが新たに同社を設立。当時、工場は多くの負債を抱え経営危機にあったというが、人材開発を含む経営改革に取り組んで見事再建を遂げた。
めっき工場は「男社会」のイメージが強かったというが、同社では業界に先駆けてダイバーシティ経営を推進し、現場で活躍する女性従業員も多い。2021年には、SDGsにも配慮したチタン製のストローを初の自社商品として発表し、話題を集めた。再出発から10年あまりで大きく変貌した同社の歩みや、学び・学び直しの取組について、堀内さんと従業員の方々にお話を伺った。
めっき業を誇れる仕事へ
堀内さんが同社を設立した際、若手の従業員は4~5人程度だった。高校を中退した従業員をはじめ、勉強が嫌いだという人が多かったそうだ。めっきは防錆や装飾のほか、近年では電子部品の接続など用途が拡大しており、同社も製造業を支える存在だったが、当時の従業員は「現場作業」としか捉えておらず、自分の仕事に誇りを持てないことから、学び・学び直しの意欲も見られなかったという。
堀内さん:いわゆる3Kと呼ばれる業種で、「自分たちは中学しか出ていないから、こんな仕事しかできない。こんな会社でしか働けない」という思いしかないようでした。めっきという仕事の重要性や、どれほどの専門的な知識や経験、勉強が必要なのか…ということが、社員に伝えられていなかったんです。
また、当時は現場の仕事に従事する従業員と経営者だけの組織で、仕事を教える人材が見当たらなかった。従業員は自らの経験のみに基づいて仕事をしており、知識や技術の共有が行われにくい状況だったという。新たな人材を採用しても、ロールモデルとなるような従業員がいないことから、なかなか定着に至らなかったそうだ。
自分たちの仕事の価値を繰り返し伝えることで、学び・学び直しの意欲を醸成
ポイント1
学ぶ意欲につながる理念の浸透
設立当時は、まだ学び・学び直しやリ・スキリングといった言葉を耳にすることはなかったというが、会社としての基盤づくりのために、堀内さんは従業員の教育に力を入れることにした。古くから在籍する従業員にも学ぶ意欲を高めてもらうために、まずは自分たちの仕事の価値を知って、誇りを持ってもらうことが大切だと考えた。
堀内さん:飛行機や自動車、パソコンにスマートフォン、水道や電気の設備といったように、めっきの技術は私たちの生活に欠かせないものに使われています。めっきの仕事が「人々のあたりまえの日常を支えている」ということは、社員に何度も伝えました。折にふれて繰り返し伝えることで、社員の意識がだんだん変わってきたんです。
旧態依然としていた会社の体質を変えるために、社内に新しい風を吹き込める人材も採用した。2013年度に大阪府の制度を活用し、大学生をインターンシップにて受け入れたところ、翌年度、女性3名、男性1名が入社してくれたという。
堀内さん:このとき採用した新入社員が中心になって、スキルアップ委員会をはじめとする教育にまつわる取組を推進し、めっき技術に関する社内研修などもスタートしました。
新入社員でもできることから着手し、まずは挨拶を習慣化する活動をはじめた。もともと挨拶の少ない職場だったというが、新人たちが率先して声をかけることで、年配の従業員たちもよいコミュニケーションがとれるようになったという。やがて、学び・学び直しに取り組むことが「かっこいい」という雰囲気ができてくるなど、少しずつ社内の意識が変わっていった。
学んだことが業務に役立ち、従業員が自信を持てるように
ポイント2、3
訓練校への派遣をはじめ、まとまった学びの時間を確保 新規事業への挑戦や異動を伴う学び・学び直しを実施
製造現場でのOJTが中心だった社内の学びに、社外でのOFF-JTも取り入れた。その一つに、業界団体が運営する「大阪高等めっき技術訓練校」への従業員の派遣があり、年間2〜4名ほどが基礎的なめっきの知識や技術を学んでいる。
堀内さん:私自身も訓練校に通っていたのですが、製造現場で感じた疑問などが、理論を学ぶことで解消され、仕事がどんどん面白くなっていくんです。
現場で経験したことが理論と結びつくことで、めっき技術の理解や精度が向上。実際に、これまでは暗黙知で対応してきたような仕事上の問題や課題も、原因の目星をつけ対応策を考えて解決できるようになった。最近では問題・課題の発生自体が減少するようにもなったという。
このほか、同社では毎月第3土曜日を研修にあてるなど、OFF-JTを実施するためのまとまった時間を確保している。
また堀内さんは、従業員が身につけた知識や技術を発揮できる場を提供することも大切にしている。営業担当者として同社に転職し、入社後に新しい学びを得たという西野高志さんも、大きな実践の場を与えられた。
西野さん:入社してすぐに、海外展開について学ぶ研修に参加させていただきました。当社で開発したチタンストローをフランスの展示会に出品することになったのですが、商品の強みを分析するところから、展示会でのブースのつくり方まで、社会人になってから初めて触れるようなことを学べました。
入社当初はめっきのこともよくわかっていなかったというが、学びの機会と実践の場を得たことで自信もつき、その後は営業活動で顧客を訪問するときなども、楽しく臨めるようになったと西野さんは胸を張る。
また、大学で経済学を学び、入社後しばらくは総務部で働いていた竹原沙紀さんは、学び・学び直しを経て、現在は品質管理を担う部署で課長として活躍している。
竹原さん:総務の仕事をうまくこなせていない気がしていたときに、社長から品質管理を任せたいと声をかけていただき、「これまでと違うことをはじめてみるのも面白いかもしれない」と思いました。もちろん不安もあったのですが、それまでの研修や講習での学びが下地になって、意外とスムーズに取り組めたんです。学んだことが実務に役立っていると感じる場面も増えました。
堀内さん:若い社員のなかには、自分のキャリアについてうまくイメージできない人も多いのですが、学び・学び直しはキャリアプランを考えるきっかけにもなります。異動を伴う学び・学び直しは、その人がどのような仕事に向いているのかを探す意味もあるんです。
学び・学び直しの取組が、採用や新規受注にも好影響を及ぼす
以上のような取組で従業員の意識や能力が向上し、より高度な学び・学び直しにも挑戦できるようになった。経営計画発表会を開いて会社全体の目標を共有し、各部署・各課の目標を設定したうえで個人目標に落とし込む取組もその一つだ。リーダーが集まる定例の会議でも、それぞれが取り組んでいる課題やその成果が共有され、社内での「学び合い」の機運が高まっている。
堀内さん:学び・学び直しによって成長し、それに伴う昇格などによって自信を得た先輩社員の姿を見て、後輩社員も同じように成長するといった「よい循環」が生まれています。
ホームページなどで自社の教育システムや資格取得者数などを公開したことで、採用にも効果があらわれたという。新規受注が伸びているのも、若手社員が増え、教育に力を入れていることが評価されたからではないかと堀内さんは分析する。
堀内さん:2014年から新卒採用に力を入れはじめましたが、そのころ採用した社員が管理職になって、やっと組織として安定してきた気がします。
学び・学び直しの推進には相応の費用もかかったが、会社の次代を担う人材が育ってくるなど、確かな成果があがっている。「製造業の設備投資と比較すれば、教育費なんて微々たるものだと思います」と堀内さんは笑う。「すぐに結果は出ませんが、社員が成長すれば、会社は大きく変わります。スタートするときは大変かもしれませんが、ぜひ学び・学び直しに取り組んでほしいですね」とエールを送ってくれた。
Company date企業データ
- 株式会社センショー
- 代表取締役社長:堀内麻祐子
所在地:大阪府大阪市西成区南津守5-2-64
従業員数:63名(2024年3月現在)
創業:2011年
資本金:1,000万円
事業内容:各種めっき・研磨の受託加工、各種機能めっきの開発
企業HP:http://www.sensyo-ltd.co.jp/