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職場における学び・学び直し促進ガイドライン特設サイト

金田コーポレーション株式会社

2024年3月15日

社員のチャレンジを積極的に支援、
会社を成長の場に

金田コーポレーション株式会社

事業内容:大型鋼構造物の製作、建設

業種
製造業
地域
岡山県
従業員数
30~49人
取り組みの概要
  1. ポイント1

    • 公的な支援を活用するなどして、多様な人材に合わせた研修を用意
  2. ポイント2

    • 管理職・リーダー向けの研修を実施
    • 社長自ら積極的な声かけなどでサポート
  3. ポイント3

    • 業務時間内にまとまった研修の時間を確保
    • 従業員の声に応えた資格取得制度の整備
取り組みの成果
一人ひとりの目標が明確になり、
学び直しにより製造技術の底上げも実現

岡山県の玉野市で、大型配管、ダクト、架台、コンベア、プラント設備といった大型鋼構造物の設計、製作から組み立て、運搬、据付工事までを手がける金田コーポレーション株式会社。「理想を掲げ、チャレンジする精神」「忍耐と安心と信頼を軸とする心」「人と人との絆を深める」といった思いが込められた「馬龍精神(ばりゅうせいしん)」をスローガンに、一品一様の製品を日々生み出している。大きな製品を扱うだけに、チームワークが非常に大切だという同社において、どのような学び・学び直しが行われているのか、代表取締役の畑島美緒さんや従業員の方々に伺った。

若手社員から管理職まで、学び・学び直しはすべての人材に必要

社歴の浅い従業員や転職者、ベテランまで多様な人材が活躍している

多くの製造業が抱える「技術伝承」にまつわる課題。同社でも、以前は昔ながらの「技術は見て盗め」という雰囲気があり、若手の従業員が質問や相談をしにくい状態だったという。

また、同社では、社歴の浅い従業員や転職者など、多様な立場の方が働いており、個々のスキルに対応した形で、溶接などの基本的な知識や技術を全員が身につけるためには、研修をはじめとする学びの機会を設けることが欠かせなかった。その一方で、ベテランの従業員や現場のリーダーにも、社内での学びや学び直しの担い手となるような働きかけが必要だった。

畑島さん:数年前まで当社は十数名で構成されており、トップダウンでの運営も可能だったのですが、社員数が増えたことに伴い、会社や部門の方針が隅々にまで伝わりにくくなるという課題が生じました。そういった面からも、中間管理職の育成が急務だと感じていたんです。

学び・学び直しによって広がる世界

同社の従業員のなかには、社会人になってからの学び・学び直しをあまり経験したことのない人が多かったという。

畑島さん:私自身、家業であるこの会社を手伝うために、30歳ではじめて入社したんです。当時は右も左もわからず、いろいろな研修に参加して、なにごとも1から学びました。

当初は課題認識をもとに研修に参加していたが、新しいことを学ぶ楽しさを知り、「学び・学び直しによって世界が広がる」という感覚を持てたそうだ。

畑島さん:学生時代に勉強が苦手だったという人も、社会人になってから学び・学び直しを経験すると変わります。大人になってからの学びは、仕事や日常生活にすぐいかせるので、楽しさや面白さを感じやすいのかもしれません。せっかく働くのに、なにも成長しないのでは、人生がつまらなくなると思うんです。私は会社が成長の場やチャンスを得る機会になればいいと考えています。

「30歳までは専業主婦だった」という畑島美緒さん

地域の経済団体との連携や公的な支援策を活用

人材開発を進めるにあたり、従業員一人ひとりが、技術の習得や資格の取得といった目標を定める個別年間計画を立てた。また、業務で必要とされる技術を「スキル表」という形で段階別に整理し、個々の従業員の習熟度にあわせて目標を設定しやすくした。

ポイント1、2
公的な支援を活用するなどして、多様な人材に合わせた研修を用意、管理職・リーダー向けの研修を実施

研修や講習を実施する際には、地域の経済団体との連携が助けになり、公的な支援も役立った。県内のものづくり企業が集まる「岡山県ものづくり女性中央会」に加盟し、人材育成をテーマにした勉強会などに参加。その活動を通してポリテクセンター(求職者や中小企業などを対象とした職業訓練や人材育成などの支援を行う施設)と縁ができ、研修や講習の幅が大きく広がったという。

畑島さん:ポリテクセンターに「こういう研修がしたい」と相談したところ、さまざまな研修メニューを利用できることがわかったんです。講師の方に事前の打ち合わせで要望をお伝えし、希望に沿った研修の提案もしてもらえました。

「中堅社員やリーダーに会社の理念を浸透させたい」といった目的に応じて、オーダーメイドに近い感覚で構成できた研修もあったという。研修を受けた従業員からも「発見があった」「面白かった」といった声が多くあがった。同社に転職して3年目を迎えた製造課の出射真一さんもその一人だ。

出射さん:前職でも研修は受けていたのですが、技術を学ぶものばかりでした。転職後、異業種の方々も一緒に参加するリーダー向けの研修を受けたときは、新たな考えに触れられて刺激を受けました。

前職も同じ製造業だったが、仕事の内容はがらりと変わり、研修が大きな助けになったという出射真一さん

ポイント3
業務時間内にまとまった研修の時間を確保

そのほか、岡山県職業能力開発協会からは、溶接などの高い技術を持ったマイスター人材も派遣された。入社後1年で日本溶接協会の認定資格を全員が取得することを目標とし、若手従業員を中心に基礎的な技術の指導を受けているという。

畑島さん:先輩や上司が業務の合間を見て個々に教えるのではなく、マイスターの指導を受ける時間をしっかり確保したことで、製造部門全体の技術の底上げにつながりました。

さらに、同社ではシニア人材を活用した学び・学び直しにも取り組んでいる。製造部門の組織改革や業務マニュアルの作成を主導できるシニア人材を採用し、生産管理などを向上させる新たな学びを得た。このシニア人材は他業種の出身で、岡山県産業振興財団からの紹介で縁ができたという。

また、品質管理における学びを得るために、同じ業界の取引先で活躍していたOBを招き、未経験の女性従業員を2年間にわたって指導してもらった。マンツーマンでの指導の甲斐あって、検査員として独り立ちでき、いまや同社に欠かせない存在になっている。女性の人材とシニア人材を組み合わせて育成する発想は、岡山県ものづくり女性中央会で実施された有識者の講演からヒントを得たという。

このほか、資格取得の制度も整えた。それまでも資格取得に対しては一定の補助を行っていたが、学び・学び直しの推進とともに、従業員から支援の内容を明確にしてほしいとの要望を受けた。そういった声に応え、資格取得支援の内容を明文化することで、従業員がより積極的に、安心して資格に挑戦できるようになったという。出射さんも「自分の強みになる資格を会社のサポートで取得できるのは、すごくありがたいことだと思います」と頷く。実際、出射さんは同社に転職したあと資格を取得し、いまも新たな資格取得に向けて学んでいるそうだ。

ポイント2
社長自ら積極的な声かけなどでサポート

出射さんは現在、リーダーとして現場での学び・学び直しを牽引するような立場にもなっている。

出射さん:現場では自分より年齢が高く、経験も豊富な方がほとんどなのですが、社長がリーダーとしての仕事がやりやすくなるように、周囲の方々に声をかけてくださったので、不安や孤立感はまったく感じなかったですね。

畑島さん:やはりコミュニケーションをとることが一番大事です。 私は毎朝現場に出て、顔色のすぐれない社員などがいると声をかけ、相談に乗るようにしているんです。管理職やリーダーに限らず、社員みんなにできるだけ声をかけるようにしています。

同社のスローガンをオブジェとして表現した出射さんの作品。「馬龍精神」の文字をレーザーで加工した技術などを、新たな仕事にも活用していきたいという

社内に学びの輪が広がり、従業員の仕事やキャリアに対する意識も向上

以上で紹介してきた学び・学び直しの取り組みは希望すれば基本的にすべての従業員が利用できるが、当初、研修や講習などに積極的に参加したのは女性の従業員だったという。

畑島さん:はじめは製造部門で働く男性が多く利用することを想定していたのですが、女性社員にも声をかけたところ、『やります、やります!』とすぐに声があがったんです。こういった学びの機会が訪れるのを、待っていたのかもしれませんね。

社内でのイベントも女性を起点に盛り上がることが多いという。

その意欲的な姿勢に引っ張られるような形で、社内に学び・学び直しの機運が醸成されていった。やがて社歴等に関わらず早期に戦力化できるようになり、リーダーとして大きな成果をあげる従業員もあらわれたという。

一方で、リーダーや管理職向けの研修を受けたが、自分にはマネジメントは向いていないと、方向転換する従業員もいた。しかし、それで学びや学び直しを諦めるのではなく、人生を充実させるべく新たなチャレンジを続けているそうだ。

畑島さん:その社員は、社内で実施した体験発表会で『学んだことで、いろいろな気づきがあった。やるかやらないかではなくて、まずはやってみる。そして、やるからには、なにごとも楽しむと心に決めた』とスピーチをしてくれました。

学び・学び直しによって、従業員が大きく変わったことを実感するという畑島さんは、「当社の社員には、子どもたちに夢をあげられるような、かっこいい大人になってほしいんです」と笑顔で語った。

本事例で特に力を入れて取り組んだ職場における学び・学び直し促進
ガイドライン

Ⅱ 労使が取り組むべき事項

Company date企業データ

金田コーポレーション株式会社
代表取締役社長:畑島美緒
所在地:岡山県玉野市田井6-7-6
従業員数:41名(2024年3月現在) 
創業:1954年
資本金:50,000万円
事業内容:大型鋼構造物の製作、建設
企業HP:https://www.kaneda-co.net/

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