2023年10月27日
一人ひとりに寄り添った人材開発で、
多様な従業員が自分らしく活躍できる会社に
株式会社グローバル・クリーン
事業内容:清掃を中心としたビルメンテナンス、清掃に関するコンサルティングなど
- 業種
- ビルメンテナンス業
- 地域
- 宮崎県
- 従業員数
- 100~300人
- 取り組みの概要
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ポイント1
- 従業員を巻き込んで経営指針書を作成し、経営戦略や人材育成へのコミットメントを獲得
- 人材開発に対する取り組みを就職の説明会などで積極的に発信
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ポイント2
- 職務に必要な能力要件に沿った目標の擦り合わせ
- 日誌のやりとりを通じた学び・学び直しの方向性の共有
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ポイント3
- 正社員に転換する研修プログラムなどを通じ、キャリアの棚卸しを実施
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- 取り組みの成果
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全社員に対して、
5年連続2%の賃金ベースアップを実現
※本記事の内容、役職、部署名は取材当時のものです
株式会社グローバル・クリーンは宮崎県日向市に本拠を置き、清掃をはじめとするメンテナンス業務を展開している。高齢者やシングルマザー、障がいを持つ方を含めた非正規社員9名で、2000年に事業をスタートさせた。創業期をさまざまな背景を持つスタッフに支えられた経験から、多様な事情を抱える方を積極的に採用し、2016年には経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選出された。2022年には宮崎県の「県次世代リーディング企業」に認定されるなど、地域経済の牽引役としても期待されている。多様な人材の学び・学び直しの取り組みについて、代表取締役社長の税田和久さんと従業員の方々にお話を伺った。
人手不足や低賃金を人材開発で解決
同社では創業期から人手不足の状態が続いており、かつては正社員を募集してもまったく応募がなかったという。そこで、まずは自社の人材の開発に注力することにした。近年、その取り組みを加速させたが、背景としては、業界全体の賃金が低く、ベースアップに必要な営業目標を立てるにあたり、それを可能とする人材開発が求められたことがある。
税田さん:衰退する地方経済のなかで、当社も最低賃金に近い現場がほとんどだったのですが、7年前に全社員の賃金を毎年2%ベースアップすると決めました。毎年それだけのベースアップをするための営業計画を実現するには、人材開発が不可欠だったんです。
業界では人材開発に積極的な企業が少ない傾向にあるといい、実施したとしてもテクニカルスキルに終始することが多いそうだ。
税田さん:テクニカルスキルは日々の業務のなかでも学んでいけるのですが、多様な人材が働く当社では、コミュニケーションをはじめとするヒューマンスキルも大切にしています。
時間と機会があれば誰もが成長できる
同社は共有価値観として「ひとりひとりの無限の可能性を信じ、共に成長します」という言葉を掲げている。
税田さん:当社はダイバーシティ人材が多く在籍しており、なかには働きづらさを抱えている人もいます。創業当時から障がいをお持ちの方と一緒に働いてきましたが、人には無限の可能性があり、誰もが活躍できるということを何度も教えられました。働きづらさの有無にかかわらず、企業が必要な時間と機会を設ければ、みんな成長できるんです。
中途採用をした人材のなかには、同社ではじめて研修を経験したという人も少なくないという。そのような現状を受け、同社では「現状は能力を発揮できていなくても、たまたま学ぶ機会に恵まれなかったに過ぎない。失敗をしても、それを糧にして学びに向き合い続ければ、必ずできるようになる」と考えるようになったという。
人材の個性やキャリアビジョンに寄り添った研修プログラム
ポイント1
従業員を巻き込んで経営指針書を作成し、経営戦略や人材育成へのコミットメントを獲得
人材開発に取り組むにあたり、社内全体で経営方針を共有することにした。全従業員が参加する「経営指針発表会」を毎年開催し、そこで発表される「経営指針書」の作成にも、すべての従業員がかかわっているという。
税田さん:まずは経営指針について、社員の共感や賛同を得て、信頼関係をつくることが必要だと考えました。最初の数年は私一人で経営指針書を作成していたのですが、いまでは部署ごとに話し合った意見を代表者が持ち寄って、半年がかりでつくりあげています。
ポイント2
職務に必要な能力要件に沿った目標の擦り合わせ
経営指針書には会社のビジョンや戦略のほか、「人材育成計画」に多くの紙幅を割き、若手従業員、管理職、役員といった職務の階層に応じた能力要件も定めた。「テクニカルスキル(業務遂行能力)」「ヒューマンスキル(対人関係能力)」「コンセプチュアルスキル(概念化能力)」の3要素をもとに、階層ごとに必要な能力を細分化してまとめ、個々の従業員が身につけるべきことが明確に示されている。
税田さん:清掃業界ではヒューマンスキルが見落とされがちですが、すべての階層で必要になります。あらかじめ研修でヒューマンスキルの基礎を学んでいるからこそ、現場で幅広い年齢層の社員とコミュニケーションを図りながら業務改善を行うスキルが身につくのだと思います。
ポイント2、3
正社員に転換する研修プログラムなどを通じたキャリアの棚卸し実施、日誌のやりとりを通じた学び・学び直しの方向性の共有
職務に必要な能力要件を提示するだけではなく、マンダラチャートなどのフレームワークを使って従業員が自身に必要な能力を見つけ、なにを学ぶかを決定できる仕組みも取り入れている。これにより、経営指針に沿いながらも、従業員が主体的に学ぶことを後押ししている。
個別に実施される研修プログラムによって、キャリアを大きく転換させる人もいる。同社の営業部で活躍している山本さんは、もともとダブルワークのアルバイトとして入社した。その後、同社の仕事を本業としたい気持ちが強くなり、正社員になるための研修プログラムを受けた。 まずスキルの棚卸しを行い、これまでの経験から学べていないスキルはなにか、なにを身につければ職務の幅を広げられるのかを分析し、研修プログラムのなかで実務をこなしながら学んでいった。半年間の研修プログラムの期間中、手書きの日誌を毎日つけた。なにができたか、なにができなかったかを日誌に記載し、改善点を検討する。日誌は上司やリーダーが毎日確認し、コメントやアドバイスを寄せてくれた。
山本さん:昨日と今日で同じ現場に入っても、日誌を書くために、昨日とは違ったことや、改善できることについて考えるようになりました。その後、正社員になってからもいろいろな研修を受けています。当初は目の前の現場をこなすことに必死で、作業者の目線でしか考えることができなかったのですが、いまは視点や考え方が大きく変わったように感じます。
従業員が増えるに連れ、現場のリーダーや管理を担う人材の育成も必要になり、マネジメントの手法やキャリアデザインなどについて学べる研修を自社で開発した。
税田さん:地方の中小企業の社員が外部研修を受けるには、都市部まで足を運ばなければなりません。それには費用や時間がかかるため、自分たちでつくることにしたんです。
同社独自の研修を開発・運用するにあたって、外部の知見や公的な制度も活用した。
税田さん:当社の専務が九州経済産業局の次世代女性リーダー育成プロジェクトに参加した際に、キャリアコンサルタントの先生とのご縁ができ、ご尽力いただきました。
研修を実施する際には、「キャリア形成促進助成金(現在の人材開発支援助成金)」も大きな助けになっているという。
税田さん:人にかかるコストが多いサービス業ですので、人材育成の費用をどう捻出するかは大きな課題でした。学ぶ場をつくるための助成金は大変ありがたいですね。
助成を受けるために書類を整える大変さはあるというが、記載項目などに誤りがあれば都度指摘を受けることができ、また定期的に申請することで書類作成の精度も高まってきたそうだ。
税田さん:申請書や報告書などの手続きのハードルは高いと思いますが、それをクリアできる会社は、正しい経営を行っていると考えることができます。私たちはどんなに苦しくても、正しい経営を行うことを大切にしてきました。そんな思いを持って、助成金を活用しているんです。
学びの意欲が向上し、賃金アップや若年層の人材の獲得も実現
同社ではパート・契約社員から、リーダー・マネジメント層まで、多様な人材を対象とした研修を展開しているが、いずれも会社が押しつけるものではなく、従業員が自ら手を挙げて参加するものだ。
税田さん:じつは研修をはじめて実施した年は、学びや学び直しに抵抗感を示す社員も少なからずいたんです。研修先で講師から研修にきた理由を問われたときに、『会社に行けといわれたから』と答えた人もいたようです。それで2年目以降は、手を挙げた人だけを対象にしたんです。
学びの意欲がある人材は、研修で得るものも多い。そんな人たちが成長する姿を目の当たりにして、あとに続く希望者があらわれた。研修を強制しないことで、組織内で従業員の自発的な学びが循環しはじめたのだ。
7年前に目標とした賃金のベースアップも実現した。以後5年間は全社員2%ずつのベースアップを達成し、昨年は5%、今年は3%の上昇が実現しているという。
税田さん:正社員の平均所得は、この8年間で1人当たり80万円アップしました。
また同社では、人材開発や社会課題に対する取り組みを積極的に発信しているが、その結果、新卒で入社する従業員など若年層の人材が増え、平均年齢もこの4年で10歳若返ったという。
ポイント1
人材開発に対する取り組みを就職の説明会などで積極的に発信
税田さん:就職やインターンシップの説明会などで、人材開発の取り組みについての質問をよく受けます。地域で働こうと考えている若い人にとって、自分が成長できる職場かどうかは、非常に関心が高いことのようです。
新卒で入社して、2年目を迎えた本田百合香さんもその一人だ。
本田さん:もともと清掃業界に興味があったわけではなく、グローバル・クリーンが社会課題を解決する姿勢に共感して入社を決めました。私も地元宮崎でいろいろなことに挑戦し、成長したいと考えたんです。
本田さんのようにいろいろな業務に挑戦したいという人材が増え、それに必要な学び・学び直しを行ったことで、一人ひとりの業務範囲が広がった。清掃の現場などで急な欠員が出たときも、ほかのスタッフが速やかにカバーできる体制ができ、より働きやすい職場環境になった。
同社では15年前から働き方改革を進めてきたというが、その実現にも学び・学び直しが大きく寄与しているようだ。従業員の成長だけではなく、その取り組みに伴う社会課題の解決や職場環境の向上についても、無限の可能性を感じさせる事例となった。
Company date企業データ
- 株式会社グローバル・クリーン
- 代表取締役社長:税田和久
所在地:宮崎県日向市亀崎1-28
従業員数:114名(2023年9月現在)
創業:2000年
資本金:900万円
事業内容:清掃を中心としたビルメンテナンス、清掃に関するコンサルティングなど
企業HP:http://globalclean.co.jp/
Company case企業事例
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事例は順次追加予定です。