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HILLTOP株式会社

2023年10月27日

学び直して生き生きと働く社員とともに、
未来をひらくビジネスを創出

HILLTOP株式会社

事業内容:部品加工事業、装置開発事業、ソフトウェア開発事業

業種
製造業
地域
京都府
社員数
100~300人
取り組みの概要
  1. ポイント1

    • 業務の最適化や効率化による、学び・学び直しに取り組む環境づくり
  2. ポイント2

    • 業務に必要なスキルの明確化と、それを身につけるための仕組みの構築
  3. ポイント3

    • システム構築、ジョブローテーションの活用、新たな事業部の設立による、教育訓練の提供
取り組みの成果
業務の効率化と学び直しの両立による、
創造的な仕事への挑戦

京都府宇治市のHILLTOP株式会社は、1961年に創業した切削加工メーカー。創業以来、大手メーカーの下請・孫請工場として部品の製造を手がけていたが、大量生産から多品種少量生産への切り替えや、製造現場の自動化といった経営改革を行い、それにまつわる人材開発も推進してきた。創業3代目となる代表取締役社長の山本勇輝さんは、「社員をルーティンワークから解放し、人がやるべき価値ある仕事に集中する」という考えのもと経営改革や人材開発を加速。他社からの工場見学が殺到しているという同社の革新的な取り組みについて、山本さんにお話を伺った。

業務の効率化と社員のモチベーションの維持

同社が経営改革に乗り出したのは1980年代のこと。下請や孫請の業務は単純作業の繰り返しになることが多く、また、いずれは価格競争に巻き込まれるといった懸念があったという。下請や孫請から脱却し、創造的な仕事を増やすためには人材開発が不可欠。「社員に単純なルーティンワークをやらせたくない」という経営者の強い思いもあった。
人材開発には費用も時間も必要で、それを賄うためには業務の最適化や効率化が欠かせなかった。一方で、最適化や効率化を実現させたことで業務が単純化し、ルーティンワークの様相を呈してくることで、社員のモチベーション向上につながらないという課題も生じたという。

(写真上)下請・孫請業務が中心だったころの旧本社工場
(写真下)経営改革を進めるなかで工場のイメージも一新

人が育たない会社に未来はない

社内システムの構築や組織編成の一新など、数々の経営改革を推進した山本勇輝さん

同社では、人が育たない会社に未来はないとの思いから、「人を育てる」ことを最大の使命としている。同社がルーティンワークを避けるのは、同じ作業の繰り返しでは学びがなく、人が育たないと考えているからだ。

山本さん:単なるスキルアップだけではなく、社員には人として成長できる業務に取り組んでほしいんです。そのためには、「人がやる価値のある仕事はなにか」ということを、経営者がしっかり見定めなければなりません。

短期的な利益にとらわれず、長期的な視点でビジネスを担える人材を育てるのが経営者のなすべきことだと山本さんはいう。これらを踏まえ、同社の長年に渡る取り組みを振り返ってみたい。

生産性の向上と人材育成の両立

同社は経営改革の端緒として、まず下請や孫請の大量生産をやめ、多品種少量生産へとシフトした。しかし、創意工夫の余地があった多品種少量の加工も、リピートの注文が入れば同じ作業の繰り返しになってしまう。

ポイント1
業務の最適化や効率化による、学び・学び直しに取り組む環境づくり

同社は課題を解決するために、個々の社員の職人技に頼っていた製品加工の手順などを分析してデータベースをつくり、それをもとに切削加工のプログラムを組んで加工を自動化できるようにした。これまで就労時間の8割は機械の前にいたという社員の業務は、プログラミングを中心としたオフィスワークに転換。一連の生産管理システムを、同社は「ヒルトップシステム」と名付けた。

自動化された工場

ポイント2
業務に必要なスキルの明確化と、それを身につけるための仕組みの構築

社員の業務が大きく変貌するにあたり、短期間でプログラマーとして戦力化する環境も整えた。まずは専門的知識がなくてもプログラマーになれるように、システムの画面上で必要な項目を設定するだけで加工に必要な最適値が自動的に選択される仕組みを構築。その上で、プログラミングのノウハウなどを詳細なマニュアルにまとめ、知識や技術を論理的に学べるようにした。また、製造工程ごとの手順も標準化し、プログラミング以外の業務も短期間で一通り経験させることで、製造業務の全体像を見通せるようにした。

製造業でありながらオフィスワークが中心となっている

こうした論理と実践の両面からの学びをもとにした自動化によって、製造部全体の生産性が高まったことで、会社にとっても社員にとっても、より創造的な仕事に取り組む余裕ができた。

山本さん:リーマンショック後に売上が落ちたときには、プログラミングの効率をより高めるシステムの改善を行い、自動化がさらに進みました。ところが、社員のモチベーションは下がってしまったんです。そんなとき、工場見学で来社された方から『みなさん、ゲーム感覚で仕事をしていますね』といわれました。褒め言葉だと思うのですが、ゲームならば何度もやっているうちに飽きてしまいます。モチベーションが下がって当然だと思いました。

ポイント3
システム構築、ジョブローテーションの活用、新たな事業部の設立による、教育訓練の提供

最適化や効率化を進めると、企業としては利益を生みやすい体質になるが、社員が考えたり工夫したりする余地が減るため、意欲は低下しがちだと山本さんはいう。そんなジレンマから脱するために、最適化や効率化から逆行するような取り組みもはじめた。

たとえばジョブローテーションの改善だ。製造部内での短期的なジョブローテーションは社員を早期に戦力化することに寄与していたが、その幅を広げて、社員のモチベーションを高めたり、仕事についての引き出しを増やしたりすることも重視した。一時的に生産性が下がったとしても、社員が多様な経験から刺激を受け、創造的な仕事に取り組むための意欲や素養を得ることに価値を置いているのだという。

また、オープンラボと名付けた試作開発室を設置したことも、新たな学びにつながった。オープンラボにはアイデアをその場で形にできる工作機器を備え、自社のプロジェクトだけではなく、スタートアップ企業など他社からの試作の依頼にも積極的に応えた。他業種と連携することで、企画やマーケティングといった経験の浅い分野の知見を多く得られたという。

山本さん:オープンラボの取り組みは、その後、企画・開発やDXなどを担う部署へと発展し、現在は『人がやるべき価値ある仕事』の1つとして次代のビジネスモデルの考案や技術開発を進める場になっています。

経営改革や人材開発にまつわる手立てを絶え間なく講じながら、近年は1on1ミーティングなどを用いて社員との接点をより強化している。社員個人の目標や今後チャレンジしたい仕事を明確にし、ともに取り組んでいきたい考えだ。

次代を担う新ビジネスの創出に挑戦

以上のように、同社の経営改革や人材開発の取り組みは、いくつかの段階を踏んで発展してきた。まずヒルトップシステムによって会社の収益や社員の業務効率が改善され、創造的な仕事に取り組む余地が広がった。最適化や効率化を進める反面、業務が単純化することもあったが、ジョブローテーションやオープンラボなどの取り組みによって、社員の学び・学び直しの機会が失われることはなかった。そして、オープンラボから発展した部署が新事業の検討や研究開発を進め、ルーティン化の課題があったプログラミングをAIによって自動化するサービスが実現している。いまや社員はプログラミングからも解放されつつあり、新時代をひらくビジネスを創出する機運が高まっている。

山本さん:経営改革や人材開発の成果には利益率の向上なども挙げられますが、私は社員が生き生きと働き、『将来はこういうことをやりたい』という声がどんどん出てくるようになったことが、一番大きな成果だと思っています。

アイデアを生むコミュニケーションも活性化した

本事例で特に力を入れて取り組んだ職場における学び・学び直し促進
ガイドライン

Ⅱ 労使が取り組むべき事項

Company date企業データ

HILLTOP株式会社
代表取締役社長:山本勇輝
所在地:京都府宇治市大久保町成手1-30
社員数:144名(2023年10月現在)
創業:1961年
資本金:3,600万円
事業内容:部品加工事業、装置開発事業、ソフトウェア開発事業
企業HP:https://hilltop21.co.jp/

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